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2017ブラインドサッカー日本選手権、FINALラウンドの展望

もう16回目となるブラインドサッカー日本選手権。
第1回は4チームの参加だったと聞く。
筆者が初めて関わった第6回大会(当時は日本視覚障害者サッカー選手権大会だった)も、全国から7チーム、人数不足で参加を断念したチームもあった。

今のようにB1カテゴリの大会ではなく、B2/3の日本選手権も併催していた。
B1とB2/3の両カテゴリにエントリーする選手も多く、彼らの息は上がる。

しかし、観衆はチーム関係者のみ。

日も暮れかけた頃に行われるPK戦。
ピッチレベルがかじかむほどの寒さだったのは、開催時期が真冬だっただからだけではないだろう。

2017年日本選手権

そんなブラインドサッカー日本選手権も、関係者の努力により、決勝戦は数千人の観客を動員するほどになった。
参加チームも年々増加し、今大会は19チーム。
関東・関西圏だけではなく、北海道、仙台、新潟、山梨、長野、愛知、岡山、広島、北九州、福岡のチームが参加した。
文字通りの全国大会となった。

予選ラウンドと最終ラウンド

昨年15回大会までは、土日の2日間で開催されていた日本選手権だが、今16回大会からは、7/2(土)、7/3(日)の2日間で準決勝までの予選ラウンドを行い、7/23(日)にFINALラウンドを行う、長期に渡る大会へと変貌した。

開催地も、予選ラウンドは神奈川県横浜市。
最終ラウンドを、開催地として固定したと言って良いだろう、東京都調布市の味の素スタジアム(今回はアミバイタルフィールド)で開催する。

最終ラウンドは、11時から3位決定戦、13時半から決勝戦が行われる。

最終ラウンドの展望

3位決定戦、決勝戦に残った4チームとも、関東リーグに所属するチーム。
九州、関西にも強豪が存在する。彼らにも最終ラウンドに残って欲しかったという思いもあるが、それはさて置いて。

最終ラウンドのラインナップは、次の通りだ。

3位決定戦
buen cambio yokohama 対 Avanzare つくば
決勝戦
たまハッサーズ 対 埼玉T.Wings

3位決定戦

奇しくも、昨年の決勝戦と同じ顔ぶれ。
前回は2対0でAvanzareが勝利したが、初めてAvanzareが五連覇に挑戦した11回大会、その夢を奪ったのはbuen cambioだった。
今年はどうなるか。

buen cambio yokohamaの攻撃アレンジが、流れを呼び寄せるか?

buen cambio yokohamaは、なんといっても落合選手の存在感が大きい。彼を中心とした地力あるチームだ。
準決勝は、たまハッサーズに4対0と大差負けを喫しているが、これも、buenの脆さというより、ハッサーズの完璧に近い強さによるもの。

そして何より、Avanzareへ雪辱に燃える気持ちは強いだろう。
この一年間、Avanzareを照準に合わせ、準備をしてきたはずだ。

昨年も、前がかりに攻めるAvanzareの裏をかく戦術が何度か見られた。
ゴールスローを攻撃陣に直接供給するのではなく、自陣に控えるディフェンダーに預け、受け取った者が、ロブボールをゴール前に蹴る。
ロブボールという点が新しい。

音が消えたボールは、相手守備陣に悟られることなく、ゴール前で待ち構える落合の足元にすっぽりハマった。

トラップ次第、振り向き様に強烈なシュート。

ボールタッチ、トラップに秀でた、日本代表のベテラン選手を擁すればこその戦法だった。

絶対王者のモチベーション

一方のAvanzare つくば。
準決勝は、埼玉T.Wingsにスコアレスドロー。ペナルティキック戦で、0-1の敗戦。

2度目の挑戦となった五連覇。
4年越しで掴んだ機会を、PKで逸した悔しさは計り知れない。

昨年戦力と比べれば、確かに、不安要素はあった。
安定感ある動きで敵を錯乱していた鳥居が、free bird mejirodaiを立ち上げ移籍。
絶対的エースの田村も、今大会は不在だった。

しかし、そうは言っても、日本代表のエースストライカー川村。
同じく日本代表で、攻守にわたり必要不可欠な存在となった佐々木ロベルトがいる。

そして、最終ラインの増田を始め、大学生選手たちの成長が目覚ましい。
増田は、佐々木がオーバーラップした後でも、しっかり攻撃の芽を摘む。

森田や山川といった攻撃陣も、昨年からの戦力ダウンを補って余りある活躍を、予選ラウンドでは見せていた。

戦力的には、相も変わらず盤石だ。
観衆は「絶対的王者」として、その闘いぶりを見つめている。
優勝は逃したが、その名に恥じぬ強烈なサッカーを見せて欲しい。

決勝戦

「たまハッサーズ 対 埼玉T.Wings」
遂に日本選手権決勝で、この顔合わせが実現したかと、感動に目を潤ませるファンも多いのではないか。

たまハッサーズはもう10年以上も、Avanzareと優勝争いをしている。
この数年は、直接対決がなかったが、それまでは勝った方が優勝という対戦を繰り返していた。
そして、どの試合も、観る者の目を離さない、壮絶なものだった。

「ハッサーズ 対 Avanzare」以前はどうだったか。
その頃は、大阪ダイバンズという関西の龍に、ハッサーズと国リハとこちゃんずT.Wingsの前身という関東の虎が挑むという構図だった。

ようやく両翼が揃った埼玉T.Wings

埼玉T.Wingsは、この10年、ずっと低迷していたわけではない。
優勝候補の本命対抗はAvanzareとハッサーズだっただろうが、「続くのは?」と問われれば、常に名の挙がるチームだった。

しかし、いざ蓋を開けると、決勝ラウンドへは進めず、順位決定トーナメントに回ることが多かった。

日本代表でもおなじみとなった、加藤を中心としたチーム。
彼の攻撃力は強力だが、それ一本頼みとなると、なかなか敵ゴールを破れない。
そもそも強豪と認知され、埼玉T.Wingsを相手とするチームは、引いてくる。

ゴール前、小さく固まったディフェンス陣を崩すのは、容易ではない。
加藤頼みになる戦術では、アタッカーを何枚もそろえる強豪チームには敵わなかった。

しかし、今大会は違う。
先日、日本代表女子が世界一の座を掴んだが、その立役者、菊島がいる。

予選ラウンドでは、男子選手を相手に、大暴れした。

菊島という強力なアタッカーを手にし、彼女を前面に出すことで、本来トップというより中盤から守備よりの適性を持つ加藤が、シャドーストライカーとして働ける。

強力な加藤というカードを、適所で使えるのだ。
今年のT.Wingsは強い。

たまハッサーズ

だが、しかし。しかしだ。
今年のたまハッサーズは更に強い。

前回大会では、準決勝でbuen cambio yokohamaに敗退。
その雪辱を、今大会では4対0という大差で果たした。

10年前に二連覇を果たしたときから、主力は殆ど変っていない。
黒田という縦横無尽にフィールド上を駆け回る、スピードスター&テクニシャンと、ディフェンス時の扇のかなめ、田中の安定した守備。
更には同じく日本代表の日向、ゴールキーパー佐藤も日本のゴールマウスを長年守ってきている。

歳を重ねているはずなのに、年々若返る彼らの動き。
プレーの精度には、熟練さというか、深みが増す。

黒田に関しては、個の力が跳び抜けている。
否、跳び抜け過ぎている。

自陣深くで敵の攻撃を挫いたと思えば、もう相手ゴール前にいる。
観ている側が、その動きを追い切れぬほど、音もなく素早く攻守に動き回る。
見えている者がその姿を捉えられないのだから、アイマスクをしていたら、いることすら気づけないのではないかと思ってしまう。

何より、ドリブル、トラップのスキルが卓越。
相手が何枚いようが、その間を縫うように進み、強烈なシュートを見舞わす。

黒田は、スピードやテクニックに注目されがちだが、彼のシュート力も国内屈指。
左右両脚とも、精度、威力ともに突き抜けている。

そして何より、大舞台に慣れている。
どんな場面でも、隙を見せない。

東の大横綱。
たまハッサーズ相手に、T.Wingsがどう戦うのか。本当に見ものだ。

最終ラウンドの見どころ

各チームの戦力分析に終始したが、最終ラウンドは、観客の皆さまも、ブラインドサッカーを心の底から楽しんで欲しい。

昨今、メディア露出の増えたブラインドサッカー。
日本代表の戦いは、直接、ご覧になったという方も多いだろう。

川村(Avanzare)、佐々木ロベルト(Avanzare)、落合(buen cambio)、加藤(T.Wings)、黒田(ハッサーズ)、田中(ハッサーズ)、日向(ハッサーズ)は、日本代表でも活躍している。

そんな彼らが、クラブに戻ると、全く別人になる。

日本代表では「組織の中の個」としての働きを求められるのに対し、出自のクラブでは、王様とばかりに振る舞う。
いちサッカー少年に戻る。

攻守のバランスを取る役目の加藤が、T.Wingsでは、セルフィッシュに、しつこいほどに、ドリブルで相手に突っかかる。

日本代表の象徴、黒田が、嬉々とボールを追いかける。ルーズボールめがけヘッドスライディングをする。

「ブラインドサッカー」の魅力。その喜びが何なのか。国内大会だからこそ見られる形で、皆様のもとに届くと思う。

そして、ぜひとも、各チームスタッフの動きを見て欲しい。
Avanzareやハッサーズが、なぜ強豪として10年以上も君臨しているのか。
なぜ、この短い期間で、ブラインドサッカーの競技レベルがここまで上がったのか。

彼ら、彼女らの働きぶりを見れば、合点が行くはず。

「あぁ、とにかく楽しみだ」
7/23(日)は、ぜひアミノバイタルフィールドでお会いしましょう。
(筆 吉川大志)

2017ブラインドサッカー日本選手権、FINALラウンドの展望
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